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インテリアの構成には神経を使う必要があるのだが、そこに住む人の気分やさらには人格を、インテリアが左右しても不恩議ではない。
私はこれを「インテリア効果」と呼んでいる。
インテリアによって人格までも左右されるのだから、その人の人生を「家」が変えることも充分あり得る。
事実、マンションを購入した部下と賃貸アパートに住む部下とでは人間が違う、と決めつける企業の管理職も少なくない。
持ち家をよしとする上司の先入観により、社内の評価がワンランク・アップ。
加えて、ローンという鞭で自らを鼓舞して、目の色を変えて仕事をすれば、ランクはもう一つ上がる。
そして「俺は一家の主だ」と自覚するようになると、職場に限らず家庭でも株が上がる-といった効果もあるわけだが、ランクを上げすぎてどん底に落ちることもあるから、ほどほどが肝心である。
今は住まいも既成品の時代だ。
セミオーダーでも出来上がりを見て買うことができる。
しかし、この出来合いの家を買うことが家族関係や自分自身に悪影響を与えることもある。
既成の間取りに家族を押し込めようとするからだ。
家づくりにまつわる細々とした苦労を自分でしなくてすむ。
地鎮祭や棟上式で職人さん、神主さんに気をつかわなくていい。
なるほど、便利ではある。
しかし、家づくりに伴う人生勉強をパスしてしまったのでは、その分、自分の家に愛着心がわくことも少なくなる。
古い家をリフォームすることも、住む人に多大な影響を与える。
まずリフォームしようと考え、計画するだけで住まいを、家族を、そして自分自身を改めて考えることになる。
リフォームで一番大切なのは〝時間〟を考えることだ。
つまり、あと何年の投資か、家族の未来は、自分の人生は、と考えることでリフォームの方針が定まるのだ。
年齢によっては、思い切って古い家を壊して建て替える案も出る。
この判断は、決して家の古さ、機能の悪さだけによらない。
住む人の将来や都合によって築五年でも、あっさり壊される家も多い。
最近では二世帯住宅への建て替えが多くなっている。
建て替えはもちろんのこと、ちょっと台所をリフォームするだけでも家族関係は変わる。
今まで台所に入ることのなかったご亭主が、リフォームを機に料理を始めるなどという例もある。
奥さんも着る物が変わり、手にマニキュアなど光らせて、十歳も若返るケースもある日一新築にしてもリフォームにしても、こうして自分たちの家族を考えることに意義がある。
これにより良い家になるばかりか、自身の人生が見えてくる。
大きな社会変化に気づくことにもなる。
子供たちの独立心が以前に増して強く、成長が速いこと、妻が労働意欲に燃えていること、そして老人たちがいつまでも若いこと……こういったところに気づくはずである。
子供は親のもの、夫婦は一つなどという神話が薄れて、それぞれがもっと人格的に尊重された新しい家族形態の芽ばえさえ感じられるはずなのだ。
言いかえれば、より積極的に家族を意識できる家こそ、これからの住まいとなるのだ。
この本は、家づくりのための手引き書ではない。
むしろ家づくりを成功させるために家族関係を考える本だと言いたい。
家族を考えることによって自分の人生も考えられる。
何の目的もなく家族や人生を考えるのはしんどいことだ。
家づくりを通じて生き方、家族のあり方を考えてもいいのではないか。
その場合に、子供部屋や寝室がたまたまテーマとなったと解釈すると、なお理解がしやすい。
気がついたら住まいは自分の思い描いたとおりのものとなり、自分も家族も明るく楽しく変わっているかもしれない。
そんな思いで話を進めていきたい。
家族を住まいづくりから見る「家族は一つ」と思ったら住まいづくりは失敗今、ここで家族論をふっつもりはない。
私は住まいを設計する設計家なので、住まいづくりを通じて感じる家族関係や家族の実際をお話ししたい。
私どもの住まいの設計上における家族とは、父親と母親、そして子供が基本である。
同居家庭ではそれに老夫婦が加わり、五人ないし六人の集団となる。
この全員を称して一般的には「家族」と言うのだろうが、私はこの集団である家族を一つのものとしてとらえていない。
なぜなら家族はけっして一つとは言えないからだ。
家族を形成する最小限の単位「夫婦」を取り上げてみよう。
なるほど夫と妻で夫婦と言える。
が、夫婦といえども一人ひとりは完全なる個人でその考えや趣味、人生観は別々だ。
子供とて同じことが言える。
ものごころつく前は別として、子供として立派に教育を受けてくると、やはり考え方や意見は違って別の個人となる。
住まいづくりの失敗は、家族や夫婦を一つのものとしてとらえることから始まる。
なにも、意地悪く家族をバラバラに引き離そうとしているのではない。
一人ひとりが住みやすく、そして互いの関係をバランスよくするためには、家族を解き離して考える方がやりやすいからだ。
これを「家族は一つ」などと建前を言うと、たちまち個々は消滅してしまう。
今のアパートや建売住宅、あるいは注文住宅でも量産住宅でも、この〝建前の家族″論で設計されていることが大きな問題なのだが、これについて気がついている人は少ない。
この建前論は、家族の当事者が「家族は一つ」でなければならないと思うことから始まる。
そしてこれが原因で家族関係にも亀裂が生じ、崩壊すらしかねないことにもなる。
一つであろうとする義務感に重ねて、夫は夫、妻は妻、そして親は親、子は子であろうとすることに疲れてしまうからだ。
実はこうした事実が、住まいづくりや住まいのリフォームを考える時に、びっくりするほど如実に現われるのだ。
だから住まいづくりはおそろしい。
私自身、住まいの設計を始めてしばらくしたころ、もう二十年以上も前のことだが、こうした家族関係の歪みを目のあたりにして、おおいに戸惑ったものだ。
その場から逃れたい衝動にかられたこともしばしばだった。
住まいの間取りを前にして、夫と妻とが互いにいったい何を考えていたのか、とびっくりし失望するのを何度となく体験したし、何年も連れ添った夫婦が家の設計図を前にして初めて人生観をぶつけ合うシーンも見た。
意外にも子育てや親の思いなどは、ほとんどの夫婦が一致していることはない。
その場で合意しているように見えても後に必ず異論が出る。
夫が妻を、親が子を、強引に自分の患いどおりにしようとすればこれも長い期間にじわじわと歪みが生じ、何かのきっかけで爆発しかねない。
家族のトラブルはだいたいがこんなところに起因する。
もちろん、締めつけばかりがトラブルの原因ではない。
甘さや無関心も後にツケとして結果があらわれる。
長年一心同体だと思っていた夫婦が、実はまったく別の考えを持っていた。
戸惑いながらも住まいをつくっていく。
時に喧嘩をしたり、一歩退いたりと、夫も妻も改めて一つの住まいのこと、家族のことを考える。
ここで「まっ、いいや」とか、「好きにしたら」とやったらすべて失敗に終わってしまう。
この失敗こそ住まいづくりにとどまらず、家族関係の失敗となる。
初めから真に一体の家族などない。
本音の住まいづくりを通じてこそ、新たな家族が形成されていくのだ。
住まいの変遷-ハウスからホーム、そしてライフへ戦後の焼け跡に建ったバラックからは夕餉の煙が立った。
近くの空地でかん蹴り遊びをやっていた子供たちが、歌を歌いながら連れだって帰ってくる。
今日は父親が薪割りに汗を流しているから風呂のある日だ。
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